【本日のおすすめ】 坂本龍一 / SMOOCHY (1995)

普段は歌わない人の歌が好きです。
楽器の演奏は卓越しているのに、声を出すやいなや弱々しく……となるとなおさら。

というわけで、今回は音楽好きへ向けて手放しに、というより、そんなニッチな嗜好=強くない歌愛好者に向けてのリコメンド。

歌う教授 in 90’s。
NYからハイコンテクストなポップスを届けていた、自ら主宰のgutレーベル期の作品。

前作「SWEET REVENGE」は商業的・戦略的ニュアンスのあるポップスでしたが(そのペダンチックな自意識もメタ的に解剖できる今こそ亦た楽しからずや)、感傷的なニュアンスは引き継がれつつも、どこか開放的(というか諦念的?)な雰囲気と作為性の後退が感じられ、絶妙なポイントに落ち着いて。

おずおずと慎ましやかな歌唱も含め、「左うでの夢」に次ぐ”スナオ・サカモト”とも言える今作。
ヒップホップやワールドミュージックを混交した、(90年代における)端正なコンテンポラリーサウンドが下敷きになったことで、全然上手くない歌唱が浮き彫りとなるのですが、それゆえ何とか丁寧にソングラインをなぞろうとする、いわば彼の歌心が胸に響くのです。

参加のジャキス・モレレンバウムのチェロが惹き立てるメロディの官能性も特筆に値しますし、「美貌の青空」「青猫のトルソ」といった名曲が収録されているのも見逃せません。

個人的には教授のディスコグラフィ中でも1、2を争うくらい好みなのですが、”名盤”という表現が適切か測りかねるので、偏愛すべき逸品とだけしたためておきます。


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