カセットテープは買取できます!近年の人気と買取の特徴を解説

CONTENTS

近年のカセットテープの再熱

2010年代は音楽好きにとって変革の季節でした。
80年代から隆盛を誇っていたCDが勢いを落とし、
レコードの人気がそれを上回ったのです。

それだけではありません。
レコードと共に復権したのがカセットテープです。

テレビや雑誌、インターネットで
”若者の間でカセットが人気!”
という特集を近年よく見かけるようになりました。

当店でもカセットコーナーを設けていますが、
実のところ、目を止めて手に取りレジへと進むお客様の多くは
リアルタイムで触れていない、おそらく30代以下であろう印象を受けます。

社会現象といえるほどの規模なのか…はさて置き。
カセット愛好のムーブメントと言える現象が確かに起きているわけですが、
これは一体どういうことなのでしょうか?

そこで、本コラムでは

”今、カセットはどうなっているのか?”

についてリサーチ、順序だてて整理してみました。

(※個人的な見解で進めている箇所や、参考情報の中には諸説あるものもございます。あらかじめご了承くださいませ。)

それにしてもいかんせん長文ですので、
特に知りたい情報が決まっている方は以下のショートカットをご利用下さい。



▶ 近年のおおまかなカセット事情について知りたい

▶ 人気復活の理由を知りたい

▶ カセット人気の高い音楽ジャンルについて知りたい

▶ 売れるカセットの特徴や傾向を知りたい

▶ 買取価格の実例を見てみたい:カセット買取リスト一覧

▶買取のできないカセットを知りたい



 

カセット再燃を取り巻く環境

カセットテープ特集の雑誌をパラパラめくると、
普段からサブカルチャーに接しているような
お洒落な雰囲気の人物が魅力を語っていて、

”趣味人の間で流行っているニッチなものなのかな?”

なんてイメージを抱きそうになります。
でも、実際はどうなのでしょうか。

また、ラジカセやウォークマンという単語を耳にしなくなって久しいにもかかわらず、
海外の新譜をチェックしていたらカセットでもリリースされることを知ったり。

”世界規模の市場なら物好きな人もいるものね……”

などと何の根拠もなく納得してしまいそうになったり。
でも、本当のところは果たして?


海外と日本国内。
調べていくと、どうやらカセット再燃を取り巻く環境は違うようなのです。

ということで、カセットブームの実態を知るために
それぞれ近年の状況を整理して行きましょう。

海外のカセット環境

2022年のカセット販売に関するデータを参照すると
アメリカでの総販売本数は44万本。
前年の2021年と比べて販売数が28%増加とのこと。

そのアメリカに一歩遅れてカセットブームが到来したと言われるイギリスでは、
それまでの過去10年の間に販売数が連続して増加。
2012年と比較すると、約50倍上昇の19万5000本以上が売れたということです。

なお、売れ行きトップ20はいずれも現行人気アーティストの新譜なので、
いわゆる懐古趣味ではなく、現在進行形のブームと言えるでしょう。

ちなみに、好調なセールスを見せるカセットの多くのリリース元はメジャーレーベル。
大手がカセットを積極的に取り扱うことで、
結果的にアンダーグラウンドも含めたカセット文化全体の延命にも繋がっている、
という指摘も聞こえてきます。

日本国内のカセット環境

かたや日本国内で生産されているカセットのタイトル数は、
80年代には最高7700作品ほど製造されていたのに対し、
2020年代に入ると二桁台にまで減少しています。

また、日本レコード協会によるレポート「日本のレコード産業」によると、
2010年以降の国内カセット販売本数(邦楽タイトル)の推移は以下のようです;

データからわかることを明確にしておきましょう。

①邦楽カセットの販売数は年々下がっている
2010年は286万6000本だったのに、2022年には4万4000本まで下降しているのが分かります。
(去年は少し盛り返して11万5000本ですが。)

②販売本数という点では、2022年のアメリカと2018年の日本はおおよそ同じ規模
下がり続ける日本に対し、アメリカでの販売数が徐々に大きくなって日本を追い越す形に。
この流れはイギリスも同じですが、そもそも英米での当初の販売数が少なすぎたのでしょうか。
いや、むしろ日本のカセットが2010年代前半に多く出回り過ぎていたのでは、とも考えられます。

そこで、邦楽カセットの括りの中でも
どのようなジャンルが内訳を構成しているのかに着目して調べてみましょう。
下のグラフはカセットで出たジャンル別のタイトル数が
どのように推移してきたかを示すものです。



ご覧のように、2020年までに国内でリリースされた新譜カセット、
そのタイトルのほとんどが演歌なのです。
ポップス・歌謡曲だけに注目すれば、2010年以降は8~33タイトルの間を行ったり来たり。

二つのグラフを照らし合わせてみると、
演歌の新譜タイトルが減少するに連れて、
邦楽のカセット販売数自体も減少していることが分かります。

2020年時点までほとんど演歌で占められているわけですので、つまり

③日本のポップス・歌謡曲のカセット新譜は目立って年々増加も減少もしていない

と言えそうです。

要因としては、そもそも<日本では今もCDが主流>なので
ポップス・歌謡曲をカセットで出す必要性がなかった、というのはあるでしょう。
その点でサブスク主流→カセット人気と移っていった海外とも異なる
固有の特殊な環境であることに注意が必要です。

と、ここまでデータを見た限り、
カセットブームと言える現象は起こっていないのでは……?
と考えるのが自然だと思います。

それでも、レコードショップで働き、レコードショップに通う一個人の経験からいえば、
新品・中古の取り扱いを問わず、レコード店でのカセットの取り扱いは実際年々増えてきていますし、
当店でカセットを購入されるお客様も決して少なくありません。

統計データと現場の肌感覚を突き合わせてみるなら、

<邦楽の新譜は滅多にカセットで発売されないけれど、
中古の旧譜や海外の新譜をカセットで入手する動きは存在する>

ということは言えるのではないでしょうか。

とはいえデータはデータとして厳粛に記録されているのも事実。
<カセットブーム>というキーワードが本当の意味を帯びるようになるのは
国内の新譜も盛り上がってからこそのはず。
これからどうなっていくのか、動向に注視したいところです。

現時点ではCDとレコードのいずれでもない
カセットというフォーマットに手を出している人の数はまだまだ多くはありません。

カセット熱はメインストリームではなく、あくまでサブストリームである

ということは念頭に置いた方が良さそうですね。

 

カセット再燃の理由

<カセットブーム>というキーワードから想像されるイメージと実際。
海外と国内での状況の違い。
それでも、程度に差こそあれど、
世界的にカセットに注がれる視線の熱量自体は間違いなく上がってきています。

では、再び支持を獲得し始めた理由とは一体何なのでしょうか。
いくつか考えてみましょう。

ものとしての魅力

まず思い当たるのは「ものとしての魅力」です。

音楽配信サービスの普及によってリスニング環境は大きく変化しました。
一定の年齢以下の人たちにとって<音楽を聴く>ことは
<サブスクやYouTubeで音声を再生する>と同義ではないでしょうか。

その前提の上で好きなアーティストや作品がありレコードも買うのですが、
それは必ずしも再生する必要はなくて、
アイテムとして所有する・ジャケットを鑑賞する意味合いが大きいのです。

これはカセットも同様であり。
彼ら・彼女らがとりわけ惹かれるのは、そのサイズ感
カセットコーナーの前を通りかかって
”かわいい!”と声を上げた方は数知れず。

CDよりも厚みがあって、でも手のひらに難なくすっぽりと収まる。
レコードよりも嵩張らなくて、コレクション欲も刺激される。
絶妙に心くすぐられる大きさであり、感覚的にお洒落なのですね。

 

手頃な価格で購入できる

新品のレコードは物価高によりすべからく高騰していて、
いわば高級品になってしまいましたが、
カセットはお手頃な価格で入手できるのが嬉しいところでもあります。

上の写真はRough Tradeの通販サイトの画面ですが、
「Tape」(11.99ドル)と「LPx2」(29.99ドル)の価格を比べれば一目瞭然ですね。
日本円だとおおよそ1900円と4700円といった具合で、2800円もの開きがあり。
この価格差はレコードとカセットの生産コストに依る部分が大きいです。

また、同じことが海外から直接取り寄せる際の送料にも同じ事が言え、
この円安の状況下ではLPを日本へ取り寄せようものならとんでもないお金がかかりますが、
カセットでならまだ何とか……という側面もあるのです。
(それでも無視できない金額になってきています……世知辛いですね。)

Bandcampなどオンラインのプラットフォームが普及し、
個々人が音楽メディアを制作・購入できるようになった現代。
音楽ライフを謳歌する上で選択肢は複数あり、
その中でも自身の好みと経済面を突き合せた上での、
現実的なオプションとしてカセットが存在するわけです。

 

制作側にとって好都合なリリース・フォーマット

これは購入者側ではなく制作側のメリットの話です。

カセットはCDやレコードと比較するとローコストで制作でき、
場所もそこまで取らないことから在庫管理しやすいメディア。

そのため、古今東西の自主制作~インディーレーベルでは、
カセットでのリリースが積極的に敢行されてきました。

近年ではコミックマーケットや文学フリマといった場に向けて、
同人誌的な態度で制作する人々もいるようですね。

また、現在は世界中でレコードが復権したことによって
生産工場の予定はぱんぱんに詰まっており慢性的なプレス待ち状態。
その順番は大手レーベルが優先されることも日常茶飯事であり……。
しかし、カセットなら出来上がりまでの時間を数カ月から数週間へと短縮できるのです。

 

音楽ジャンルに適した録音媒体である

サブスク登場以降、少なからず目にする意見の一つにこういうものがあります。

”CDやレコードで持っている音源なのに、
手軽さからサブスクの方でついつい流してしまう。”

この意見から浮き彫りになる事実。
<オフラインで音楽を聴く行為は、実は精神的なハードルが高い。>

裏を返せば、このハードルを越えるようなモチベーションがあってこそ
人はフィジカルで音楽を聴くのだと言えます。

サブスクよりも良い音質で鑑賞したい。
手間をかけて体験としてのリスニングを楽しみたい。
カセットならではの音質が気に入っているから。
などなど……。

ちなみに、カセット=音質が悪いという固定観念があるかもしれませんが、
劣化がひどくない限り、恐らく多くの方が想像される以上に良い音質で鳴ります。

さて、いろいろな理由が浮かぶところですが、
その音楽ジャンルは<カセットでこそ聴きたい/聴くべき>だと思える要素がある
というのは、敢えてカセットを選択する積極的な動機として
もっともらしいのではないでしょうか。
あるいは、

カセットは特定のジャンルの音楽を聴くのに適した録音媒体である

とも言い換えられるはずです。

 

カセットテープの人気ジャンル

では、カセットで聴くのに適した音楽とは何か。
その結論に至る要素としてどういったものが挙げられるのか。

この項では特に人気のあるジャンルにフォーカスしてみたいと思います。

シティポップ

カセット再燃の象徴ともいえる音楽の一つがシティポップです。

ちょうど去年に山下達郎の諸作品が再発されたとき、
レコードだけでなくカセットも展開されていたことは記憶に新しいところ。

とはいえ、先述のように日本国内において
新品のカセットがリリースされる作品数はごく限られたものですので、
人気のシティポップのカセットというのは即ち、中古カセットを意味します。

近年のシティポップ・ブームの中で
立役者の一人としてよく取り上げられる、韓国のプロデューサーNight Tempo 夜韻。
彼もカセットで蒐集していることを度々公言していますが、
お洒落なヴィンテージ・コレクションという趣味の側面も強くなってきているのでしょう。

そんな<シティポップ×カセット>をたしなむ若い世代にとって、
アナログ時代のサウンド=カセットの音質とマッチしている
というのは当たり前ながら、しかし大きな理由の一つです。

また、リアルタイムの人たちから
”角松敏生はドライブデートのBGMだった”
といった意見も聴かれるように、
カセットはカーステレオで聴くものでもありました。

”懐かしい新しさ”を体現する、当時の文化を写し取ったガジェット。

いわばそんな意味合いを含むような、
初めて触れる世代に新鮮な刺激をもたらしてくれるアイテムでもあるのです。

 

近年の洋楽

さきほど触れたイギリスのカセット事情だと
2022年は多くのカセットが販売され、売れ行きトップ20は新譜でした。
現行人気アーティストが占める割合も多く、
ビリー・アイリッシュやテイラー・スウィフト、The 1975などが並ぶ形に。

したがって、若い年齢のファン層にとっては高価なLPや文化として廃れてしまったCDではなく、
カセットこそが無理せずに、かつクールに所有できるアイテムなのだろうと推察されます。

ところで、サブスクが主流となり無料同然で音楽を聴ける現代。
そもそもフィジカルの優先順位は必然的に後退しているはずです。
にも拘わらず、彼/彼女らが購入する動機とは一体?

<アイテムとしてお洒落だし手頃な価格で買える>のは確かにそうなのですが、
そもそもの前提レベルでの根拠があるのでは?と考えたくなり。

そこでカギとなるのがMERCH(マーチ)という概念です。


サブスクの普及によってレコードやCDを買い控えるようになった。
その代わりにお金をライブに参加することに使って、
好きなアーティストを応援したい・アーティストに還元したい、
という選択をする人も増加しました。

こういった状況を反映してか、
ミュージシャン側の生存戦略として目立つようになった考え方がMERCHです。
MERCHANT=商品の略で、いわゆる物販のことですね。
<推し活>という言葉が世間一般に馴染んだ今、
その重要性はますます大きく感じられるところでしょう。

もちろん、ライブTシャツや会場限定販売の商品など
物販自体はサブスク登場のはるか以前からあります。

しかし、レコードやCDといった音源が、
例えばキーホルダーやタオルのような商品と同列に扱われる、
といった状況は今の時代ならではでしょう。
肝心の音楽がオンラインで供給されるからこそのフラット化です。

つまり、音源はもはや特権的な位置にはなく、あくまでグッズの一つに組み込まれた。
ひいては、所有欲を満たすアイテムとして、カセットも十分考えられる選択肢となったのですね。

このように環境が整備され、消費者側の意識レベルでも変化が進んだことで
カセット再評価につながる素地ができていったのだろう、と考えられるのです。

 

ヒップホップ/R&B

カセット全盛の80年代に発売されていたものでも、
現在ではそもそもレコードよりも出回っていないケースもあり。
場合によっては、レコードでなら安価で入手可能なヒット作が、
カセットだとミドルプライスで取引されるケースも存在します。

需要と供給のバランスがカセットだと変わってくる。
その議論でいくと、典型的な例の一つがヒップホップ/R&Bです。

特に90~00年代のCD最盛期に一気に盛り上がったジャンルなので、
アンダーグラウンドなものは別として、
メジャーな人気作や名盤のCDは中古であれば非常に安価で入手しやすいところ。

しかし、CDが普及した分だけカセット(とレコード)の流通数は絞られ少数に。
CDだと相場が100円ほどのタイトルも、
カセットだと数千円というケースは往々にしてあります。

もちろん、低音の強いヒップホップという音楽自体が
カーステレオで流すのにも適していてカセット需要がある、
ということも想像に難くありません。
そもそも、ヒップホップを一般大衆に広めたのはカセットですので……。
(スパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』でBoomboxを担いでいたキャラクターを思い出しましょう。)

加えて、純粋なアルバムだけでなく
ミックステープの存在感が強いのもこのジャンルの特色。
伝説的なDJやディガーによるミックスもまた、探す人の多いアイテムです。

 

DIY精神の音楽

DIY精神に則った音楽であるパンク
正にカセットの作品が目立つジャンルの一つです。

ハードコアからジャンクにポップ・パンクまで。

生産コストのハードルが低いカセットは、
自主制作者やインディーレーベルにとって
リリース・フォーマットとして現実的かつ誠実なもの。

また、<音がアナログな質感を帯びる録音媒体>というカセットの特性が
粗削りでローファイなサウンドと相性が良い
というシナジーの側面も無視できない理由の一つでしょう。

精神性・経済面・音楽性との相性からカセットが選ばれる。
その点ではブラックメタルノイズ・ミュージックも並んで浮上してきます。

どちらもコアな音楽ジャンルでイメージが湧かず、
どういうことなのだろう?と訝しげる方も多いかもしれません。


HR/HMのサブジャンルであるブラックメタル
音楽性は多岐にわたるので一概には言えないのですが、
粗悪と表現すべきだろう非常にローファイな録音の、
それでいて凄みのあるサウンドという特徴が、
ジャンルを象徴する一側面として存在します。

そして、実はバンド形態だけでなく、
個人だけで多重録音して制作するアーティストも決して少なくない
というのは際立った傾向でしょう。
ゆえにパンク同様、カセットとの相性は抜群です。


かたやノイズ・ミュージックの事情はどうなのでしょうか。

微妙な音の差異を集中して捉えるような、
繊細な鑑賞態度を求める向きの作品は
高音質で録音可能なCDが合っているでしょう。
カセットでは磁気テープ固有のアナログな<歪み>が生じてしまうからです。

しかし、むしろこの<歪み>をこそ魅力と捉える向きもあるのがこのジャンル。
録音したデータではそこまで引っかからなかった音が、
磁気テープに写し取られることがある種のフィルターとして機能し、
現実で耳にするのとは異なる響きとなって面白さが出てくる。

別ベクトルでのローファイサウンドの愉しみという可能性があるのですね。

また、DIY精神の観点から特筆すべきメリットがもう一つ。
それは

生産コストを抑えることで可能となる、
別のポイントへのリソース振りです。

例えば、木箱の中にオブジェと同封したり、カセットに絵具で着色したり…。

限られた生産数にして徹底的にコストが低くなれば、
逆にカセット一点一点に凝ったデザインを手作業で施すような、
通常であれば経済的観点から難しい選択肢も視野に入れられるわけですね。

ちなみに例として持ってきた上の写真は、
電子音楽・ノイズ音楽の作家WORTHによる「Penumbral Calypso; Early Garden Walls」というカセット。
生地をボルトで留めた板(?)にカセットが紐で括り付けられ、
その間に錆びた釘が巻かれた、ひりひりするような刺激的なデザイン。
これはとても大量生産できませんね……。

メッセージ性や批評精神を込めてカセットに加工を加えられ、アート表現の幅が広がる。
アーティスト、リスナーの双方にとって魅力的であることは言うまでもありません。

 

ニューエイジ/アンビエント

イギリスでカセットの売れ行きが好調であるという話に触れましたが、
特に売り上げ上昇が著しかったのが、コロナウイルスがパンデミックを引き起こした、
いわゆるコロナ禍に入ってからだったそうです。

不要不急の外出制限やリモートワークの推奨など家の中の籠る時間が増えた結果、
スマホとイヤホンで手っ取り早く…というよりも、
ゆっくり家の中で音楽を流すスタイルが好まれ、根付いたのかも知れません。

その流れで、コロナ禍のタイミングで世界的に広く聴かれるようになったジャンルがあります。

ニューエイジ/アンビエント

ストレスがかからず、時間帯やバイオリズムの起伏を問わずに流せる音楽性。
静かで落ち着くサウンドはホーム・リスニングにぴったりで、
多くの人々の聴く音楽の選択肢の中に入り込んだのもごく自然に思います。

元々10年代半ばあたりから一部の音楽好きの間で徐々に熱が高まっていたのですが、
YouTubeに(非公式ですが)アップロードされたこのタイプの音源の再生回数が
ぐんぐん伸びていったのは明らかに10年代末以降。

知る人ぞ知るアーティストだった吉村弘も、
アップロードされた諸作品がいずれも数十万以上の再生回数をカウントし、
日本の名盤リストを組むなら外せなくなってしまったほどの再評価が起きたのが象徴的でしょう。

そんなニューエイジ/アンビエントは、
聴く手段としてカセットも積極的に選ばれている数少ないジャンルの一つでもあります。

レコードだと流し聴きするという感じではないけど、
カセットならぼんやりかけておくのに合っている
という感覚的な方向性もあるかも知れません。

また、カセットでのみリリースされる作品が少なくない
という点も見逃せないでしょう。

先述のDIY精神の音楽の延長になりますが、
パソコン一台あればDTMで音楽制作ができる現在、
ニューエイジ/アンビエントの作家も多く活動しており、
フィジカルで出す場合は制作コストのそこまで大きくないカセットで、
というのは理にかなっています。

 

ヴェイパーウェイヴ

2010年代にポスト・インターネット時代の音楽として
アンダーグラウンドで勃興したヴェイパーウェイヴ(vaporwave)
カセットの音楽という印象の強いジャンルです。

<ネット上に上がっている音源を再生速度を落としてサンプリングする>
というのがこの音楽を作る手法。

そのサンプリングの元ネタとしてが選ばれる傾向にあるのが、
80年代のメガヒット曲や、ショッピングモールで流れていそうなフュージョンで……
紛れもなくカセット黄金期の世界が再構築されているのでした。

結果的に(というより必然的に)カセットで聴くのにマッチしたサウンドになるわけですが、
この形態でリリースされる理由はそれ以前にもっと単純で、
何度も触れているようにカセットなら製造コストが低いからです。

資本が介入し、音楽制作に多人数がかかわることもないヴェイパーウェイヴは
ひっそりとオンラインで販売される個人製作の代物。

ゆえに、あくまで極々一部のリスナー、
それもコミュニティと言ってもいいかも知れない、
小さな規模の間でのみカセットが売買され楽しまれていた。

……はずだったのですが、
何が起こるかわからないのがインターネットです。

想定以上に世界の多くの人々の心を捉えたようで、
少なくとも10年代後半の時点において
ヴェイパーウェイヴ的意匠を少なからず目にするようになっていました。
(アートワークのヴィジュアルが印象的なのも特徴だったのですが、
そちらの方が音楽性よりも広く伝播していった印象です。)

ヴェイパーウェイヴという概念を知る・触れる人の総数が増え、
ただでさえ少ない本数のカセットを争奪するという、
コレクター数が上回る状況がしばしば起こります。

それゆえ、カルト的人気を誇る作品はプレミアが付き非常に高騰する傾向があります。

このジャンルの代名詞とも言える作品である
MACINTOSH PLUS「Floral Shoppe」のオリジナル・カセットに至っては、
10万円以上の価格で取引されたり、精巧なブートレグが多数出回ったりするほどなのです。

 

カセットテープの買取について

どんなカセットテープが売れるのか

さて、ここまでカセットブームのあらましと、
カセットの存在感の強いジャンルを見てきました。
その上で問うべき疑問に移りましょう。

『一体どんなカセットが売れるの?』

先述のジャンルなら何でもOK、というわけではありません。
そして、同じタイトルでも特別な規格のカセットだと一気に価値の付くものあります。
一筋縄ではいかない中古カセットの市場傾向を覗いてみましょう。

 

レコード人気のあるタイトル

レコードで人気のある作品はカセットでも人気がある。

100%とは言い切れませんが、市場の相場を確認していくとこのような傾向が認められます。
リスナーを魅了する名作であれば、カセットも手元に置いておきたいと思うのは自然なこと。

場合によってはレコードよりもぐんと差をつけて高額になる場合も。
例えば、名作ゆえにレコードは多く流通しているがカセットだと少ない。
あるいは、70年代に発売された初期カセットでコレクターが手放さず、なかなか市場に出回らない。
などなど、事情として様々なパターンがあり得ます。

 

未開封・付属品完備

新品未開封というのはそれだけで大きな価値となります。
ましてやニッチなカセットの世界において、当時のままの保存状態というのは
たとえ音楽自体を聴けなくともコレクター精神を充分に満たします。

また、カセットにはジャケットや歌詞カードだけでなく、
例えばピンナップのような付属品が入っていることがありますが、
この付属品が残っているか欠品しているかで価値は大きく変わってしまいます

付属品、という表現が適切か分かりませんが、
先述のDIY精神の音楽ジャンルの項で触れたように、
カセット一点一点に特殊な加工や外装が施されている場合もあります。
その場合は全て含めて一つの作品であって、
カセット本体だけの状態だと価値がある程度損なわれてしまう……
というケースもあるので注意しましょう。

 

人気アーティストの限定盤

メジャーレーベルから作品を出しているような人気アーティストは
限定盤としての音源をフィジカル・リリースすることが往々にしてあります。

例えば海外のレコード事情においては、
通常のブラック・ヴァイナルに加えて
数量限定のカラー・ヴァイナルを複数パターン販売する
という戦略が常となってきました。

この流れはカセットについても当てはまります。
昨今のカセット熱の高まりも受けてか、
スタンダード・エディションのカセットに加えて、
色やデザインを変更したリミテッド・エディションも展開
もちろん数が限られているため、発売間もなくプレミアが付くことになります。

 

デモテープ/PROMO ONLY

音楽制作会社にアーティストが売り込む際に送る自主制作音源=デモテープ
一般流通ではなく、限られた数だけアーティスト自身の手仕事で作られたカセットは、
それが後々に人気を獲得した有名アーティストのものとなるとやはりプレミアが付きます。

しかもそれがファン垂涎の幻の音源、
例えば公式リリースのされていない未発表楽曲が入っていたとなると、
その価格は一気に上昇することに。

同じく一般流通の商品ではないもので、
販促目的(PROMO ONLY)で制作されたものも同様の傾向にあります。
やはり制作された数が多くない稀少品であり、
コレクターズアイテムとしての価値から高額で取引されやすいのでしょう。

 

メタルテープ

レコードやCDに高音質盤があるように、
カセットにも高音質な規格があるのをご存じでしょうか。

そもそも、録音用カセットテープには音質によるいくつかのクラス分けが存在します。

 ●グレードの基底となるノーマルテープ(TypeⅠ)
 ●一段階高音質なものがハイポジションテープ/ハイバイアステープ(TypeⅡ)
 ●最も高音質なものがメタルテープ/メタルポジション(TypeⅣ)

これらのグレード、つまり音質レベルはテープ素材によって決まります
以下の表はテープの種類とその素材の主成分、およびテープの色の一覧です;

種類 主成分 テープの色
ノーマルテープ 酸化鉄 赤茶色や焦げ茶色
ハイポジションテープ コバルトと酸化鉄 黒もしくは黒褐色
メタルテープ 酸化していない鉄をメインとする合金 ダークグレー

最高音質であるメタルテープは;

 ・録音レベルの限界が高く、大音量の音楽も音割れや歪みが発生しにくい
 ・低音域/高音域もしっかり出る
 ・ハイポジ同様にノイズが少ない

という強みがあります。

(ちなみに、TDKをはじめとする大手メーカーが生産を始めた1979年を
”メタルテープ元年”と呼ぶそうです。)

この特性を商品の魅力とすべく、録音用ではなく正規のアーティスト音源として、
メタルテープを使用した高音質盤としてのカセットが各レコード会社からリリースされました。

名称は会社ごとに違っていて、
当時のビクター/RVCからは「メタルミュージックカセット」
日本コロンビアからは「メタルダイナミックサウンド」
ソニーからは「メタルマスターサウンド」
トリオ(現在のJVCケンウッド)からは「スーパー・メタル・シリーズ」
といったように、それぞれシリーズが銘打たれており。

これらはレコードでいうところのマスターサウンドのようなもので、
同じタイトルが通常のカセットで生産されるのに加えられての、
オプショナルなバージョンのアイテムでした。

さて、これらは基本的には通常のプレーヤーでも聴けるのですが、
メタルテープならではの高音質を楽しむなら対応機器を用意すべきでしょう。

というのも、やはりテープの素材自体が違っているからです。
素材が違うということは、カセットを読み取る再生機器側の適切な設定も変わってきます
せっかくのメタルテープ仕様なのですから、本領発揮できるプレーヤーで聴きたいですね。

他にも、読み取り部分であるヘッドの素材がメタルテープに合っているかどうか、
という相性面もプレーヤーによって異なってくる可能性があります。
例えば、摩擦に弱い素材がヘッドに使われていると、
ノーマルなら問題ないのにメタルテープだとぐんぐん擦り減ってしまう、なんてことも。

つまるところ、メタルテープは再生環境を選びます。
そして対応のプレーヤーは基本的に、ノーマルのみ対応のものより高価です。

それでも。

再生環境を選ぶデメリットあれど、
熱狂的なアーティストのファンやオーディオ愛好家からすれば、
高音質というのはそれを補って余りある優位性なのです。
ゆえに、欲しい

元々メタルテープ自体、高価なハイエンド商品なので、
同じタイトルが通常のカセットとメタルテープとで発売されている場合、
生産数は後者が圧倒的に少ないです。
稀少価値が付くのは必然的と言えるでしょう。

それが人気アーティストのタイトルだったりすると、
需要が輪をかけて高まり争奪戦へと発展。
オークションサイトで出品されれば高額をたたき出すのが常となっています。


カセットテープの買取相場

”なるほど、どういう傾向で取引されやすいのかは分かった。
じゃあ、実際何がどれくらいの値段で買い取ってもらえるのだろう?

多くの方が一番気になるのはそこではないでしょうか。

肝心の相場感覚をお伝えすべく、
本項では各ジャンルの人気作品を中心にピックアップ。
当店での買取価格を一気に掲載しました!

国内盤、輸入盤、再発盤。
タイトルによっては色んなバージョンのあるカセット。
ジャケットと照らし合わせつつご覧くださいませ。


※注意点
・当店での現時点の買取金額になります。
・美品コンディションを基準にした金額になります。
・付属品が欠品している場合は大きく値段が下がる商品もございます。

 

【日本のロック/ポップス】

金延幸子 / み空 / HRCT004 

買取金額 3,500円
備考:国内盤 / 2016年再発

日本のフォーク名盤として後年再評価の高まった1972年発表のタイトルです。
2016年になって初のカセットでの再発。すでに廃盤で需要は高いです。

 


フリッパーズ・ギター / 海へ行くつもりじゃなかった / PSTR-1001

買取金額 50,000円
備考:国内盤 / 1990年再発

ネオアコ~渋谷系の名作を残したフリッパーズ・ギターはLPも高いですが、
カセットはより稀少。正規品・見本盤を問わずプレミアが付いています。

 


ザ・ブルーハーツ / S.T. / MEC-20

買取金額 2,500円
備考:国内盤 / 1987年発売

説明不要の大名盤。世代を問わず人気のブルーハーツはその分探す人の数も多く、
レコードと同様、需要は安定して高いアーティストと言えます。

 


【歌謡曲】

美空ひばり / ナットキングコールを歌う / CAY-1321

買取金額 1,000円
備考:国内盤 / 1988年再発

美空ひばりはジャンルに限らない多くの音楽好きから支持されています。
ジャズのスタンダード・ナンバーを歌った65年の名作、そのカセットの再発です。

 


ちあきなおみ / あまぐも / CAY-1060

買取金額 7,000円
備考:国内盤

ビル・エヴァンスの有名なジャケットをオマージュした名作。
カルト的人気からLPは数万円で売買されています。
一方でカセットが存在することは意外と知られていないかもしれません。

 


テレサ・テン / コンサート・ライブ / 32TT-1095 

買取金額 20,000円
備考:国内盤 / 1986年発売

若者の間の昭和歌謡人気がよく話題になりますが、特に人気のアーティストの一人がテレサ・テンです。
海外コレクターもいるため、彼女のカセットはベスト盤や香港盤などでも高額取引されます。

 


【シティポップ】

山下達郎 / FOR YOU / RAT-8801

買取金額 3,000円
備考:国内盤 / 1982年発売

シティポップのゴッドファーザーとして世界中に認識されるに至ったヤマタツの代表作。
LPがぐんと高騰しましたが、大名盤ゆえカセットも同じく探す人が多いです。

 


角松敏生 / After 5 Clash / RAT-8812

買取金額 9,000円
備考:国内盤 / 1984年発売

こちらもシティポップ人気の象徴的作品。
カーステで角松をかける行為自体がトレンディ…という憧憬込みのガジェット感覚もあってでしょうか。
まさにカセットで所有したいタイトルです。

 


荒井由実 / コバルトアワー / ZA-1555

買取金額 3,000円
備考:国内盤 / 1975年発売

ユーミンのレコードは一般レベルで売れていて、本作も中古LPは1000円未満で購入できるもの。
しかし、カセットとなると稀少で、かつ初版はいくつかの曲がLPと別ミックスなので価値が高いです。

 


【日本のヒップホップ】

Nujabes / Metaphorical Music / HOCT01

買取金額 1,000円
備考:国内盤 / 2023年再発

聴き心地がよく、繊細で深いサウンドが世界中で支持されるヌジャベス。
代表作のこちらは2003年発表ですが、近年の人気の高まりから20年後の2023年にカセット再発されました。

 


 

Muro / King Of Diggin’  / none

買取金額 2,500円
備考:国内盤 / 1995年発売 / MIXTAPE

日本の代表的ディガーであるDJ Muro。
彼のメインワークの一つとして知られる「King of Diggin’」シリーズは、
ヒップホップ元ネタを集めたいわゆるミックステープ。この文化の礎となった重要作です。

 


BUDDHA BRAND / 病める無限のブッダの世界 / none

買取金額 18,000円
備考:国内盤 / 非売品(PROMO ONLY)

ジャパニーズ・ヒップホップの大名盤の、プロモオンリーのカセットです。
“ROUGH EDIT by DEV LARGE”と記載があり、全トラックが短いダイジェスト仕様になっています。

 


【ROCK/POPS】

Neil Young / After The Gold Rush /M5 2283

買取金額 1,000円
備考:US盤

ニール・ヤングの大名盤はやはりカセットも人気です。
カセットも様々な国や時代で発売されており、バージョンによって相場は変わります。



Fleetwood Mac / Rumours / YSA1194W

買取金額 1,500円
備考:国内盤 / 1977年発売

TikTokで本作収録の「Dreams」が流行したあたりからレコードが高騰してきており、
みなが改めて探す名盤という立ち位置に。国内盤のカセットは海外需要も高いです。



Bobby Caldwell / S.T.  / 25KP 418

買取金額 1,300円
備考:国内盤 / 1978年発売

AORの名作であるこちらも、近年価値の高まってきた一枚。
このジャンルの受け皿であった日本、その国内盤は帯付きLPもカセットも人気です。
なお、今作に限らずAORにはLPが安くてもカセットだと高いケースも。



【POST PUNK / NEW WAVE】

U2 / War / 25Y-156

買取金額 15,000円
備考:国内盤 / 1983年発売

U2の初期3作の国内盤カセットは非常に高額で取引される傾向があり、その額はレコードの比ではないほど。
数自体が少ないからなのか?と考えてみますが、しかし明確な理由はまだわかっていません。


Talking Heads / Remain In Light / M5S 6095

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 1980年発売

アフリカ音楽を独自解釈した、デヴィッド・バーン率いるトーキング・ヘッズの代表作。
日本でもライブを捉えた映画が度々上映されるなど根強い人気を誇り、
海外産のカセットも一定以上の価格でも入手したい人は多いところ。

 


New Order / Low-Life / CCK-5090-AX

買取金額 5,000円
備考:国内盤 / 1985年発売

ジョイ・ディヴィジョンおよびニュー・オーダーに注がれる羨望の眼差しは、
ジャケットをあしらったTシャツを着る人もよく見るように、時代を経ても不朽。
国内盤の帯付きLP同様、国内盤カセットを求める向きは確実にあります。

 


【ALTERNATIVE】

Nirvana / Nevermind / DGCC-24425

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 1991年発売 / Dolby HX Pro

90年代から30年近くが経過し、今なお輝きを増すニルヴァーナの永遠の一枚。
LPはもちろん、ヴィンテージTシャツやカセットでも集めたい人は抜きんでて多いです。

 


My Bloody Valentine / Loveless / 9 26759-4

買取金額 11,000円 (UK盤 ccre 060 はさらに高価買取)
備考:US盤 / 1991年発売

不動の名作の立ち位置にあるマイブラの1991年作ですが、
シューゲイザーのリバイバルがここ2、3年で来ている感じもあり、
このジャンルの聖典として評価は盤石、当時のカセットは稀少なのも相まって高額取引に。

 


Oasis / (What’s The Story) Morning Glory? /C CRE189

買取金額 3,500円
備考:UK盤 / 1995年発売

今なお数々の若手アーティストのインスピレーション源となり続けているオアシスの2nd。
カセットの寸法に合わせてジャケット写真が引き延ばされていますが、ブートではなく公式のUKオリジナル盤。
これはこれでまた味わいが(?)ありますね。

 


【近年の洋楽】

Billie Eilish / When We All Fall Asleep, Where Do We Go? / 00602577427732

買取金額 1,300円
備考:EU盤 / 2019年発売

ポップスターの代表格となった若きビリー・アイリッシュの記念すべき1st。
Lime Green、Orange、Black、 Red Translucent などカラーバリエーションが複数がありますが、
現在のところ、買取金額はいずれも同額とさせていただきます。

 


The 1975 / Being Funny In A Foreign Language / DH01507

買取金額 1,300円
備考:UK盤 / 2022年発売 

世界だけでなくここ日本でも人気度・知名度の高いUKのバンドThe 1975。
本作は車をコンセプトとした3部作の最終作にあたります。
カーステレオとの連想からもあってか、カセットも発売されています。

 


Khruangbin / Con Todo El Mundo / DOC153

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 2018年発売 / Pink

古いタイのファンクに影響を受けたUSの3人組バンド、クルアンビンは時代も国籍も超えた音楽性から、世界中でラブコールの送られる人気アクトです。
ロードムービーのサウンドトラックも彷彿とさせる音楽性は、カーステと相性抜群、カセットとだってもちろん。
なお、非公式のブートレグも出回っているようですが、正規品はカセットの色がピンクですのでご注意を。

 


【PUNK/HARDCORE】

Sex Pistols / Never Mind The Bollocks Here’s The Sex Pistols / CCK-5012-AX

買取金額 60,000円
備考:国内盤 / 1977年発売

パンク・ロックの金字塔であり歴史的名盤。
国内盤カセットでは”勝手にしやがれ!!”の邦題がしっかりプリントされた日本独自のジャケットに。
そのデザインの珍しさもあってか、世界のコレクターが探し非常に高額です。

 


Bad Brains / S.T.  / A106

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 1982年発売

USハードコアの先駆で、オリジナルはカセットであるBad Brainsの代表作。
カセットのカラーバリエーションがYellow、Red、Greenなど複数出ています。
なお、そのバージョンによって買取金額が変わる可能性がありますのでご留意ください。

 


NOFX / Punk In Drublic / 86435-4

買取金額 1,000円
備考:US盤 / 1994年発売

メロコアの草分けであるUS西海岸の雄、NOFXの1994年作です。
スケートのようなストリートカルチャーとも親和性のあるメロコア~ポップパンク。
カセットの強いジャンルだったため、当時キッズだった大人たちはノスタルジーを感じ取るようです。

 


【HR/HM】

Kiss / Destroyer / VCW-1089 (CAB-C1004)

買取金額 15,000円
備考:国内盤 / 1976年発売

Kissの見慣れた名作のジャケットながら、”地獄の軍団”のなんともいえぬフォント感が映える国内盤カセット。
なお、国内盤でVCW-1089という型番も一致しながら異なるバージョンが存在。
買取金額も異なってきますのでご注意ください。

 


Iron Maiden / Piece Of Mind / ZR28-860

買取金額 10,000円
備考:国内盤 / 1983年発売

HR/HMの国内盤LPは帯の有無によって価値が格段に変わってくるのですが、
日本語の独特の文言が掲載されているという点ではカセットのジャケットも同じく。
アイアン・メイデンの国内盤カセットはいずれも高い需要を誇ります。

 


 

Metallica / Master Of Puppets / E4-60439

買取金額 2,500円
備考:US盤 / Dolby HX PRO

メタリカの、そしてスラッシュメタルの金字塔3rd。
スラッシュメタルの普及に拍車をかけたのはカセットだという話も耳にしますね。
いくつかバージョンがある中、こちらはノイズが出にくいと言われるドルビーHX PROという仕様です。

 


【SOUL/FUNK】

Marvin Gaye / What’s Going On / 3746353394

買取金額 1,500円
備考:US盤 / Motown Cassette Classic

1971年発表のニューソウルの大名作は多くのバージョンが発売されてきました。
こちらはモータウンのタイトルを再発する『Motown Cassette Classic』というシリーズのバージョンです。
最初期に出たUSやUKのものであれば、より高い買取価格を見込めます。

 


Michael Jackson / Thriller / EPIC/SONY 33.6P-211

買取金額 10,000円
備考:国内盤 / 1982年発売 / Metal Master Sound

コレクターや一般のリスナーを問わずLP・カセットともに探す人が多いマイケル。
一段と高額なのが高音質盤であるメタルマスターサウンド仕様のカセット(通常のプレーヤーでも再生可)。
コレクター総数の規模は言わずもがなであり、ゆえに彼らの蒐集欲が掻き立てられるのでしょう。

 


Sade / Diamond Life / FRT 39581

買取金額 800円
備考:US盤 / 1985年再発

BGMとして流しやすく、かつカセットの音質とも相性の良さそうな80年代のソウル・ミュージック。
そんな条件を辿っていくなら、最適解はもしかしたらシャーデーなのかも知れません。
US盤は赤字で”SADE”と記載されたデザインで、これもまた時代を映したガジェット感がたまりません。

 


【HIPHOP/R&B】

WU-TANG CLAN / ENTER THE WU-TANG (36 CHAMBERS) / GET811-CA 19658861044A

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 2023年再発

ヒップホップ・クラシックであることを疑う者のいない、NYのラッパー梁山泊ウータンの1st。
カセットはエディション問わず需要がありますが、30周年記念で昨年再発されたこちらも人気があるようです。

 


Lauryn Hill / The Miseducation Of Lauryn Hill / CT 69035

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 1998年発売

最近AppleMusicが発表したオールタイムベストアルバムの企画で1位に輝いたネオソウル名作。
CD全盛とは言え、世界的なヒット作のためカセットも少なからず出回っているのですが、
様々な観点から再評価され続け、今後も一定以上の価格をキープするのではないかと思われます。

 


Dr. Dre / 2001 /00602508334573

買取金額 1,200円
備考:EU盤 / 2019年再発

それまでのブーンバップ主流のヒップホップ界を刷新したゲームチェンジャー、ドクター・ドレ1999年作。
20周年にあたる2019年に公式再発されたEU盤およびUS盤のカセットは、
すでにミドルプライス以上でも取引されやすいウォンテッドなエディションです。

 


【JAZZ/FUSION】

Miles Davis / ‘Round About Midnight / 18KP 691

買取金額 2,500円
備考:国内盤 / MONO 

他のジャンルと比較すると出回っているボリュームは少なく感じられる往年のジャズのカセット。
そもそも音質面からカセットと相性の良いジャンルと言うには中々難しく……。
しかし、マイルスのような歴史的名盤のカセット、それも国内盤であればやはり需要は高いです。



Bill Evans Trio / Portrait In Jazz / VCW-533

買取金額 2,500円
備考:国内盤 / 1980年再発 

マイルスと同じことがビル・エヴァンスのカセットについても言えます。
当店でもジャズリスナーに限定されない、本当に多くの人々がCD・レコードを問わず音源を探しに来られますが、そのことを考えればカセットの相場にも納得がいきます。

 


カシオペア / ミント・ジャムス / ALC-20002

買取金額 3,000円
備考:国内盤 / 1982年発売 

J-FUSIONの代表であり今や海外のディガーが「このレコードありますか?」と尋ねすぎて
お店によっては「No MINT JAMS」という貼り紙さえするという(?)カシオペアのライブ盤。
LPはジャムのジャケットが印象的ですが、カセットだと全く違うデザインで見逃してしまいそう。

 


【REGGAE】

Bob Marley & The Wailers / Legend / A4-90169

買取金額 1,500円
備考:US盤 / 1989年再発 / Dolby HX Pro

ボブ・マーリーの有名なベスト盤は、カセットだけでも欧米からアジアに至る各国で生産され、
今日までに少なくとも150以上のバージョンが出回っているようです。
今回掲載したのは最初の発表から5年後にUSから再発されたエディションですのでご留意ください。

 


V.A. / The Harder They Come (Original Soundtrack) / ZCM 9202

買取金額 2,000円
備考:US盤 / 1983年再発

ジミー・クリフやメイタルズの楽曲が収録されたジャマイカ映画の名サントラであり、世界で商業的に成功したレゲエ作品の一枚。
1972年当初、カセットのフォーマットはUSでは発売されなかったのですが、10年後になって再発・流通することに。

 


Linton Kwesi Johnson / LKJ In Dub / 510 170-4 (RRCT 34)

買取金額 2,800円
備考:EU盤

詩人でありUKの代表的なレゲエアーティストであるリントン・クウェシ・ジョンソン、1980年発表の人気作です。
ポストパンクの仕事でも知られるデニス・ボーヴェルと共に制作されたダブ・ポエトリー。

 


CLUB MUSIC

Goldie / Timeless / 828 646-4

買取金額 2,500円
備考:UK盤

制作した本人もこの1stを越えられずにいる、ドラムンベース(DnB)の金字塔であり、まさにタイムレスな記念碑的作品。
クラブ・ミュージックのプロデューサーの多くがそのユニークさを語るように、後年への影響も途切れず。
近年はDnBの復興の機運もありますし、このジャンルのクラシックをカセットで所有する意味は少なからずあるのではないでしょうか。

 


Massive Attack / Mezzanine / WBRMC4

買取金額 2,500円
備考:EU盤

ダークで深く落ち込んでいくような、しかし神々しさも等しく湛えたトリップホップの傑作。
ダビーで中低域に重心のあるサウンドはカーステレオでも試してみたくなるところ。

 


Moodymann / DJ-Kicks / K7327C

買取金額 3,000円
備考:ドイツ盤 / 2016年発売

デトロイトのディープハウス魔人、ムーディーマンによるDJミックス作品です。
ベルリンのレーベル!K7 Musicからの人気ミックスシリーズですが、
特例的にカセットでも出ているあたりに彼の異常なカリスマ性が認められます。

 


【NEW AGE/AMBIENT】

Brian Eno / Ambient 1 (Music For Airports) / EG – AMBC 001

買取金額 5,000円
備考:UK盤 / 1979年発売

アンビエントの代名詞たるブライアン・イーノの「空港のための音楽」ですが、コンセプトには”空港の生み出すノイズと共存可能なこと”とう項目もあり、かつイーノ自身は”比較的小さめ音から、聴こえるか聴こないかぎりぎりの音量”で流すことを推奨しているのです。
テープに起因するノイズ、モニターを介さないプレーヤー…本質的なレベルでカセットとマッチする音楽だったとは。

 


吉村弘 / Green / LITA192-WC01

買取金額 2,500円
備考:US盤 / 2020年再発

YouTubeアルゴリズムにより言語検索の壁を越えて素敵な音楽に突然出会う現象。
それによって知る人ぞ知る国産アンビエントの秘宝が、世界中の人々のお気に入りとなるなんて誰が予想できたでしょうか。
その需要の高まりもあってUSの名門レーベルから待望の再発されるに至りました。

 


Laraaji / Essence – Universe / SYNC 310

買取金額 2,500円
備考:US盤 / 1987年発売

ブライアン・イーノと接点がありつつも、アンビエントというよりニューエイジの大家として再評価のぐんと進んだ元コメディアンのララージ。
彼の残しているカセット作品は多数ありますが、人気作の一つがこちらです。
A面とB面で長尺の一曲ずつという、カセットで気持ちよく流せる構成がジャスト。

 


【AVANT-GARDE/EXPERIMENTAL】

 

Esplendor Geometrico / Eg1 / data 0011

買取金額 3,000円
備考:ドイツ盤 / 1982年発売

インダストリアル・ミュージックの代表的ユニットの最初期作品。
本国のスペイン盤がオリジナルかと思いきや、実はドイツで生産されたこちらが初版にあたります。

 


Cabaret Voltaire / Mix-Up / 9 61002-4

買取金額 1,500円
備考:US盤 / 1990年再発

UKシェフィールドのキャバレー・ヴォルテールのディスコグラフィ中、
とりわけ人気の高いのが3人組時代の初期作です。
1979年発表のタイトルで、1990年に名門レーベルMUTEから唯一のカセット再発がされました。

 


猫 シ Corp. / Palm Mall / NOP-018

買取金額 2,500円
備考:チリ盤 / 2016年再発 / CLEAR PINK

ヴェイパーウェイヴには様々なコンセプトに基づくサブジャンルが存在。
そのうちの一つであるMall Softの代表的作家がオランダの猫 シ Corp.(キャット・システム・コープ)です。
Mall Softはショッピングモールの音響感を連想させる音楽スタイルであり、
そのローファイさ加減はカセットの音質と非常に親和性が高いもの。

 


【映画サウンドトラック】

V.A. / トップガン オリジナル・サウンドトラック / 28KP-1380

買取金額 1,000円
備考:国内盤 / 1986年発売

映画「トップガン」が公開されたのは1985年でしたが、
続編の「トップガン マーヴェリック」が2年前に公開された際、帯付きの国内盤LPがどっと上昇しました。
そのこともあってか、国内盤カセットもミドルプライスで取引されています。

 


大野雄二 / 人間の証明 オリジナル・サウンドトラック / VSF1039A

買取金額 2,500円
備考:国内盤 / 1977年発売

映画「人間の証明」の劇伴はLPだと比較的見つかりやすいのですが、カセットとなると難易度は上がります。
大野雄二の仕事は海外需要もありLPならミドルプライス、カセットだと稀少性からそれ以上のお値段が付きます。

 


石橋英子 / Drive My Car O.S.T / PETF-91039

買取金額 5,000円
備考:国内盤 / 2021年発売

海外映画祭での評判から日本国内でも多くの鑑賞者が現れた濱口竜介監督「ドライブ・マイ・カー」。
音楽を手掛けたのは鬼才・石橋英子。
CDやLPも存在しますが、劇中でキーアイテムとなるカセットでこそ、という本作のファンは確実にいるでしょうし、かつ限定盤のためプレミアが付いている状況です。

 


【アニメ/ゲーム】

 近藤浩治 / スーパーマリオブラザーズ オリジナル・サウンドトラック / 10FC-2046

買取金額 5,000円
備考:国内盤 / 1986年発売 / 特製キャラクターシール付属

聴いたことのない人はいないだろう、あのマリオです。
ジャケットがそのままということもあって、カセットだとファミコンソフトと間違えてしまいそうな。
2曲入りの7インチも存在しますが、こちらは一曲分多く扱いとしてはマキシシングルに該当。

 


すぎやまこういち / 交響組曲 ドラゴンクエストIII そして伝説へ・・・ / KLA1567

買取金額 1,500円
備考:国内盤 / 1988年発売 / ロゴステッカー+全曲譜面+解説書付属

すぎやまこういちの手がけるドラクエシリーズの劇伴、その3作目です。
作品自体の人気度がシリーズ内でも高いこと、名曲『おおぞらを とぶ』が収録されていることもあり、今も探す人がいるのだと思われます。

 


久石譲 / となりのトトロ サウンドトラック / 25AGC-2058

買取金額 4,500円
備考:国内盤 / 1988年発売

世界中で愛されるスタジオジブリの作品。
特に宮崎駿監督とタッグを組む久石譲のスコア(およびイメージアルバム)もまた、老若男女問わず探されている人気アイテムです。
トトロの劇伴はCDはもちろん、LPも近年再発されましたが、カセットの発売はまだこの一回切りのよう。



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買取できないカセットテープ

最後に、カセットのなかでも当店では買取できない(値段がほぼ付かない)ものについて触れておきたいと思います。

カセット人気でこれも値段が付くのかなと思いきや実は需要がなく、
せっかく持ち込んだのに……という悲劇を防ぐために。
そして、何がカセットに期待されているのかを改めて知る意味も込めて確認しましょう。

以下に該当するカセットは基本的にはお値段が付かない傾向にあります;

・クラシック音楽
・演歌
・童謡
・落語/リスニングテープ
・カラオケ
・使用済みの録音用カセット
・状態不良品

カセットの出回る頻度が他のジャンルと比べて低いクラシック音楽ではありますが、
輸入盤のカセットでも多くの場合はお値段が付かず、国内盤はさらにその確率が高いのでご注意下さい。

国内で一番出回っていてリサイクルショップなどで見かけるカセットは演歌でしょう。
当店ではレコードと同様に需要が低いため、カセットもお値段が付きません。

録音用のカセットテープも未使用の未開封品であれば買取は出来ますが、
すでに一度使用されていた場合は買取不可です。

ただし。

録音用のメタルテープは現在でも需要があるため、
使用済みでも一定以上の価格にて買取可能です。
未開封だと更なる高額が付く可能性大ですのでお見逃しありませんよう。

 

ミュージックファーストでは、カセットテープの買取も可能です!

近年の状況と取引における傾向、人気ジャンルなど、
カセットにまつわる情報を見てきました。

具体的に作品と買取価格を照らし合わせて、
”あの有名作品のカセットは今ならこれくらいの値段がつくのか!”
と相場感覚を感じて頂けましたでしょうか。

あるいは録音せずにそのまま眠っていた高音質テープが
いまなお需要があることに驚かれた方もいらしゃるかもしれませんね。

確かに、ブームという言葉がメディアの上で躍っているものの、
まだまだ一部の音楽好きやカルチャー愛好家の間で熱を帯びている状況ではあります。
しかし、カセットそのものの魅力というのは普遍的なもので、
その熱は着実にゆっくりと、オーバーグラウンドへ伝播しているのではないか?とも思えるのです。

そんな今の機運を捉えた上で、当店ではカセットテープの買取も積極的に行っておりますので、
本記事を参考にぜひお持ち込み頂けましたら幸いです。

長文、お目通しいただきありがとうございました。

 

(執筆:A.K.)