【2026年7月最新】カセットテープは買取できます!近年の人気と買取の特徴を解説
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近年のカセットテープの再熱
2010年代は音楽好きにとって変革の季節でした。
80年代から隆盛を誇っていたCDが勢いを落とし、
レコードの人気がそれを上回ったのです。
それだけではありません。
レコードと共に復権したのがカセットテープです。
テレビや雑誌、インターネットで
”若者の間でカセットが人気!”
という特集を近年よく見かけるようになりました。
当店でもカセットコーナーを設けていますが、
実のところ、目を止めて手に取りレジへと進むお客様の多くは
リアルタイムで触れていない、おそらく30代以下であろう印象を受けます。
社会現象といえるほどの規模なのか…はさて置き。
カセット愛好のムーブメントと言える現象が確かに起きているわけですが、
これは一体どういうことなのでしょうか?
そこで、本コラムでは
”今、カセットはどうなっているのか?”
についてリサーチ、順序だてて整理してみました。
(※個人的な見解で進めている箇所や、参考情報の中には諸説あるものもございます。あらかじめご了承くださいませ。)
それにしてもいかんせん長文ですので、
特に知りたい情報が決まっている方は以下のショートカットをご利用下さい。
▶ 近年のおおまかなカセット事情について知りたい
▶ 人気復活の理由を知りたい
▶ カセット人気の高い音楽ジャンルについて知りたい
▶ 売れるカセットの特徴や傾向を知りたい
▶ 買取価格の実例を見てみたい:カセット買取リスト一覧
▶買取のできないカセットを知りたい
カセット再燃を取り巻く環境
カセットテープ特集の雑誌をパラパラめくると、
普段からサブカルチャーに接しているような
お洒落な雰囲気の人物が魅力を語っていて、
”趣味人の間で流行っているニッチなものなのかな?”
なんてイメージを抱きそうになります。
でも、実際はどうなのでしょうか。
また、ラジカセやウォークマンという単語を耳にしなくなって久しいにもかかわらず、
海外の新譜をチェックしていたらカセットでもリリースされることを知ったり。
”世界規模の市場なら物好きな人もいるものね……”
などと何の根拠もなく納得してしまいそうになったり。
でも、本当のところは果たして?
海外と日本国内。
調べていくと、どうやらカセット再燃を取り巻く環境は違うようなのです。
ということで、カセットブームの実態を知るために
それぞれ近年の状況を整理して行きましょう。
海外のカセット環境
2022年のカセット販売に関するデータを参照すると、
アメリカでの総販売本数は44万本。
前年の2021年と比べて販売数が28%増加とのこと。
そのアメリカに一歩遅れてカセットブームが到来したと言われるイギリスでは、
それまでの過去10年の間に販売数が連続して増加。
2012年と比較すると、約50倍上昇の19万5000本以上が売れたということです。
なお、売れ行きトップ20はいずれも現行人気アーティストの新譜なので、
いわゆる懐古趣味ではなく、現在進行形のブームと言えるでしょう。
ちなみに、好調なセールスを見せるカセットの多くのリリース元はメジャーレーベル。
大手がカセットを積極的に取り扱うことで、
結果的にアンダーグラウンドも含めたカセット文化全体の延命にも繋がっている、
という指摘も聞こえてきます。
日本国内のカセット環境
かたや日本国内で生産されているカセットのタイトル数は、
80年代には最高7700作品ほど製造されていたのに対し、
2020年代に入ると二桁台にまで減少しています。
また、日本レコード協会によるレポート「日本のレコード産業」によると、
2010年以降の国内カセット販売本数(邦楽タイトル)の推移は以下のようです;
データからわかることを明確にしておきましょう。
①邦楽カセットの販売数は年々下がっている
2010年は286万6000本だったのに、2022年には4万4000本まで下降しているのが分かります。
(去年は少し盛り返して11万5000本ですが。)
②販売本数という点では、2022年のアメリカと2018年の日本はおおよそ同じ規模
下がり続ける日本に対し、アメリカでの販売数が徐々に大きくなって日本を追い越す形に。
この流れはイギリスも同じですが、そもそも英米での当初の販売数が少なすぎたのでしょうか。
いや、むしろ日本のカセットが2010年代前半に多く出回り過ぎていたのでは、とも考えられます。
そこで、邦楽カセットの括りの中でも
どのようなジャンルが内訳を構成しているのかに着目して調べてみましょう。
下のグラフはカセットで出たジャンル別のタイトル数が
どのように推移してきたかを示すものです。

ご覧のように、2020年までに国内でリリースされた新譜カセット、
そのタイトルのほとんどが演歌なのです。
ポップス・歌謡曲だけに注目すれば、2010年以降は8~33タイトルの間を行ったり来たり。
二つのグラフを照らし合わせてみると、
演歌の新譜タイトルが減少するに連れて、
邦楽のカセット販売数自体も減少していることが分かります。
2020年時点までほとんど演歌で占められているわけですので、つまり
③日本のポップス・歌謡曲のカセット新譜は目立って年々増加も減少もしていない
と言えそうです。
要因としては、そもそも<日本では今もCDが主流>なので
ポップス・歌謡曲をカセットで出す必要性がなかった、というのはあるでしょう。
その点でサブスク主流→カセット人気と移っていった海外とも異なる
固有の特殊な環境であることに注意が必要です。
と、ここまでデータを見た限り、
カセットブームと言える現象は起こっていないのでは……?
と考えるのが自然だと思います。
それでも、レコードショップで働き、レコードショップに通う一個人の経験からいえば、
新品・中古の取り扱いを問わず、レコード店でのカセットの取り扱いは実際年々増えてきていますし、
当店でカセットを購入されるお客様も決して少なくありません。
統計データと現場の肌感覚を突き合わせてみるなら、
<邦楽の新譜は滅多にカセットで発売されないけれど、
中古の旧譜や海外の新譜をカセットで入手する動きは存在する>
ということは言えるのではないでしょうか。
とはいえデータはデータとして厳粛に記録されているのも事実。
<カセットブーム>というキーワードが本当の意味を帯びるようになるのは
国内の新譜も盛り上がってからこそのはず。
これからどうなっていくのか、動向に注視したいところです。
現時点ではCDとレコードのいずれでもない
カセットというフォーマットに手を出している人の数はまだまだ多くはありません。
カセット熱はメインストリームではなく、あくまでサブストリームである
ということは念頭に置いた方が良さそうですね。
カセット再燃の理由
<カセットブーム>というキーワードから想像されるイメージと実際。
海外と国内での状況の違い。
それでも、程度に差こそあれど、
世界的にカセットに注がれる視線の熱量自体は間違いなく上がってきています。
では、再び支持を獲得し始めた理由とは一体何なのでしょうか。
いくつか考えてみましょう。
ものとしての魅力
まず思い当たるのは「ものとしての魅力」です。
音楽配信サービスの普及によってリスニング環境は大きく変化しました。
一定の年齢以下の人たちにとって<音楽を聴く>ことは
<サブスクやYouTubeで音声を再生する>と同義ではないでしょうか。
その前提の上で好きなアーティストや作品がありレコードも買うのですが、
それは必ずしも再生する必要はなくて、
アイテムとして所有する・ジャケットを鑑賞する意味合いが大きいのです。
これはカセットも同様であり。
彼ら・彼女らがとりわけ惹かれるのは、そのサイズ感。
カセットコーナーの前を通りかかって
”かわいい!”と声を上げた方は数知れず。
CDよりも厚みがあって、でも手のひらに難なくすっぽりと収まる。
レコードよりも嵩張らなくて、コレクション欲も刺激される。
絶妙に心くすぐられる大きさであり、感覚的にお洒落なのですね。
手頃な価格で購入できる
新品のレコードは物価高によりすべからく高騰していて、
いわば高級品になってしまいましたが、
カセットはお手頃な価格で入手できるのが嬉しいところでもあります。
上の写真はRough Tradeの通販サイトの画面ですが、
「Tape」(11.99ドル)と「LPx2」(29.99ドル)の価格を比べれば一目瞭然ですね。
日本円だとおおよそ1900円と4700円といった具合で、2800円もの開きがあり。
この価格差はレコードとカセットの生産コストに依る部分が大きいです。
また、同じことが海外から直接取り寄せる際の送料にも同じ事が言え、
この円安の状況下ではLPを日本へ取り寄せようものならとんでもないお金がかかりますが、
カセットでならまだ何とか……という側面もあるのです。
(それでも無視できない金額になってきています……世知辛いですね。)
Bandcampなどオンラインのプラットフォームが普及し、
個々人が音楽メディアを制作・購入できるようになった現代。
音楽ライフを謳歌する上で選択肢は複数あり、
その中でも自身の好みと経済面を突き合せた上での、
現実的なオプションとしてカセットが存在するわけです。
制作側にとって好都合なリリース・フォーマット
これは購入者側ではなく制作側のメリットの話です。
カセットはCDやレコードと比較するとローコストで制作でき、
場所もそこまで取らないことから在庫管理しやすいメディア。
そのため、古今東西の自主制作~インディーレーベルでは、
カセットでのリリースが積極的に敢行されてきました。
近年ではコミックマーケットや文学フリマといった場に向けて、
同人誌的な態度で制作する人々もいるようですね。
また、現在は世界中でレコードが復権したことによって
生産工場の予定はぱんぱんに詰まっており慢性的なプレス待ち状態。
その順番は大手レーベルが優先されることも日常茶飯事であり……。
しかし、カセットなら出来上がりまでの時間を数カ月から数週間へと短縮できるのです。
音楽ジャンルに適した録音媒体である
サブスク登場以降、少なからず目にする意見の一つにこういうものがあります。
”CDやレコードで持っている音源なのに、
手軽さからサブスクの方でついつい流してしまう。”
この意見から浮き彫りになる事実。
<オフラインで音楽を聴く行為は、実は精神的なハードルが高い。>
裏を返せば、このハードルを越えるようなモチベーションがあってこそ
人はフィジカルで音楽を聴くのだと言えます。
サブスクよりも良い音質で鑑賞したい。
手間をかけて体験としてのリスニングを楽しみたい。
カセットならではの音質が気に入っているから。
などなど……。
ちなみに、カセット=音質が悪いという固定観念があるかもしれませんが、
劣化がひどくない限り、恐らく多くの方が想像される以上に良い音質で鳴ります。
さて、いろいろな理由が浮かぶところですが、
その音楽ジャンルは<カセットでこそ聴きたい/聴くべき>だと思える要素がある
というのは、敢えてカセットを選択する積極的な動機として
もっともらしいのではないでしょうか。
あるいは、
カセットは特定のジャンルの音楽を聴くのに適した録音媒体である
とも言い換えられるはずです。
カセットテープの人気ジャンル
では、カセットで聴くのに適した音楽とは何か。
その結論に至る要素としてどういったものが挙げられるのか。
この項では特に人気のあるジャンルにフォーカスしてみたいと思います。
シティポップ
カセット再燃の象徴ともいえる音楽の一つがシティポップです。
ちょうど去年に山下達郎の諸作品が再発されたとき、
レコードだけでなくカセットも展開されていたことは記憶に新しいところ。
とはいえ、先述のように日本国内において
新品のカセットがリリースされる作品数はごく限られたものですので、
人気のシティポップのカセットというのは即ち、中古カセットを意味します。
近年のシティポップ・ブームの中で
立役者の一人としてよく取り上げられる、韓国のプロデューサーNight Tempo 夜韻。
彼もカセットで蒐集していることを度々公言していますが、
お洒落なヴィンテージ・コレクションという趣味の側面も強くなってきているのでしょう。
そんな<シティポップ×カセット>をたしなむ若い世代にとって、
アナログ時代のサウンド=カセットの音質とマッチしている
というのは当たり前ながら、しかし大きな理由の一つです。
また、リアルタイムの人たちから
”角松敏生はドライブデートのBGMだった”
といった意見も聴かれるように、
カセットはカーステレオで聴くものでもありました。
”懐かしい新しさ”を体現する、当時の文化を写し取ったガジェット。
いわばそんな意味合いを含むような、
初めて触れる世代に新鮮な刺激をもたらしてくれるアイテムでもあるのです。
近年の洋楽
さきほど触れたイギリスのカセット事情だと
2022年は多くのカセットが販売され、売れ行きトップ20は新譜でした。
現行人気アーティストが占める割合も多く、
ビリー・アイリッシュやテイラー・スウィフト、The 1975などが並ぶ形に。
したがって、若い年齢のファン層にとっては高価なLPや文化として廃れてしまったCDではなく、
カセットこそが無理せずに、かつクールに所有できるアイテムなのだろうと推察されます。
ところで、サブスクが主流となり無料同然で音楽を聴ける現代。
そもそもフィジカルの優先順位は必然的に後退しているはずです。
にも拘わらず、彼/彼女らが購入する動機とは一体?
<アイテムとしてお洒落だし手頃な価格で買える>のは確かにそうなのですが、
そもそもの前提レベルでの根拠があるのでは?と考えたくなり。
そこでカギとなるのがMERCH(マーチ)という概念です。
サブスクの普及によってレコードやCDを買い控えるようになった。
その代わりにお金をライブに参加することに使って、
好きなアーティストを応援したい・アーティストに還元したい、
という選択をする人も増加しました。
こういった状況を反映してか、
ミュージシャン側の生存戦略として目立つようになった考え方がMERCHです。
MERCHANT=商品の略で、いわゆる物販のことですね。
<推し活>という言葉が世間一般に馴染んだ今、
その重要性はますます大きく感じられるところでしょう。
もちろん、ライブTシャツや会場限定販売の商品など
物販自体はサブスク登場のはるか以前からあります。
しかし、レコードやCDといった音源が、
例えばキーホルダーやタオルのような商品と同列に扱われる、
といった状況は今の時代ならではでしょう。
肝心の音楽がオンラインで供給されるからこそのフラット化です。
つまり、音源はもはや特権的な位置にはなく、あくまでグッズの一つに組み込まれた。
ひいては、所有欲を満たすアイテムとして、カセットも十分考えられる選択肢となったのですね。
このように環境が整備され、消費者側の意識レベルでも変化が進んだことで
カセット再評価につながる素地ができていったのだろう、と考えられるのです。
ヒップホップ/R&B
カセット全盛の80年代に発売されていたものでも、
現在ではそもそもレコードよりも出回っていないケースもあり。
場合によっては、レコードでなら安価で入手可能なヒット作が、
カセットだとミドルプライスで取引されるケースも存在します。
需要と供給のバランスがカセットだと変わってくる。
その議論でいくと、典型的な例の一つがヒップホップ/R&Bです。
特に90~00年代のCD最盛期に一気に盛り上がったジャンルなので、
アンダーグラウンドなものは別として、
メジャーな人気作や名盤のCDは中古であれば非常に安価で入手しやすいところ。
しかし、CDが普及した分だけカセット(とレコード)の流通数は絞られ少数に。
CDだと相場が100円ほどのタイトルも、
カセットだと数千円というケースは往々にしてあります。
もちろん、低音の強いヒップホップという音楽自体が
カーステレオで流すのにも適していてカセット需要がある、
ということも想像に難くありません。
そもそも、ヒップホップを一般大衆に広めたのはカセットですので……。
(スパイク・リーの映画『ドゥ・ザ・ライト・シング』でBoomboxを担いでいたキャラクターを思い出しましょう。)
加えて、純粋なアルバムだけでなく
ミックステープの存在感が強いのもこのジャンルの特色。
伝説的なDJやディガーによるミックスもまた、探す人の多いアイテムです。
DIY精神の音楽
DIY精神に則った音楽であるパンクは
正にカセットの作品が目立つジャンルの一つです。
ハードコアからジャンクにポップ・パンクまで。
生産コストのハードルが低いカセットは、
自主制作者やインディーレーベルにとって
リリース・フォーマットとして現実的かつ誠実なもの。
また、<音がアナログな質感を帯びる録音媒体>というカセットの特性が
粗削りでローファイなサウンドと相性が良い
というシナジーの側面も無視できない理由の一つでしょう。
精神性・経済面・音楽性との相性からカセットが選ばれる。
その点ではブラックメタルとノイズ・ミュージックも並んで浮上してきます。
どちらもコアな音楽ジャンルでイメージが湧かず、
どういうことなのだろう?と訝しげる方も多いかもしれません。
HR/HMのサブジャンルであるブラックメタル。
音楽性は多岐にわたるので一概には言えないのですが、
粗悪と表現すべきだろう非常にローファイな録音の、
それでいて凄みのあるサウンドという特徴が、
ジャンルを象徴する一側面として存在します。
そして、実はバンド形態だけでなく、
個人だけで多重録音して制作するアーティストも決して少なくない
というのは際立った傾向でしょう。
ゆえにパンク同様、カセットとの相性は抜群です。
かたやノイズ・ミュージックの事情はどうなのでしょうか。
微妙な音の差異を集中して捉えるような、
繊細な鑑賞態度を求める向きの作品は
高音質で録音可能なCDが合っているでしょう。
カセットでは磁気テープ固有のアナログな<歪み>が生じてしまうからです。
しかし、むしろこの<歪み>をこそ魅力と捉える向きもあるのがこのジャンル。
録音したデータではそこまで引っかからなかった音が、
磁気テープに写し取られることがある種のフィルターとして機能し、
現実で耳にするのとは異なる響きとなって面白さが出てくる。
別ベクトルでのローファイサウンドの愉しみという可能性があるのですね。
また、DIY精神の観点から特筆すべきメリットがもう一つ。
それは
生産コストを抑えることで可能となる、
別のポイントへのリソース振りです。
例えば、木箱の中にオブジェと同封したり、カセットに絵具で着色したり…。
限られた生産数にして徹底的にコストが低くなれば、
逆にカセット一点一点に凝ったデザインを手作業で施すような、
通常であれば経済的観点から難しい選択肢も視野に入れられるわけですね。
ちなみに例として持ってきた上の写真は、
電子音楽・ノイズ音楽の作家WORTHによる「Penumbral Calypso; Early Garden Walls」というカセット。
生地をボルトで留めた板(?)にカセットが紐で括り付けられ、
その間に錆びた釘が巻かれた、ひりひりするような刺激的なデザイン。
これはとても大量生産できませんね……。
メッセージ性や批評精神を込めてカセットに加工を加えられ、アート表現の幅が広がる。
アーティスト、リスナーの双方にとって魅力的であることは言うまでもありません。
ニューエイジ/アンビエント
イギリスでカセットの売れ行きが好調であるという話に触れましたが、
特に売り上げ上昇が著しかったのが、コロナウイルスがパンデミックを引き起こした、
いわゆるコロナ禍に入ってからだったそうです。
不要不急の外出制限やリモートワークの推奨など家の中の籠る時間が増えた結果、
スマホとイヤホンで手っ取り早く…というよりも、
ゆっくり家の中で音楽を流すスタイルが好まれ、根付いたのかも知れません。
その流れで、コロナ禍のタイミングで世界的に広く聴かれるようになったジャンルがあります。
ニューエイジ/アンビエント。
ストレスがかからず、時間帯やバイオリズムの起伏を問わずに流せる音楽性。
静かで落ち着くサウンドはホーム・リスニングにぴったりで、
多くの人々の聴く音楽の選択肢の中に入り込んだのもごく自然に思います。
元々10年代半ばあたりから一部の音楽好きの間で徐々に熱が高まっていたのですが、
YouTubeに(非公式ですが)アップロードされたこのタイプの音源の再生回数が
ぐんぐん伸びていったのは明らかに10年代末以降。
知る人ぞ知るアーティストだった吉村弘も、
アップロードされた諸作品がいずれも数十万以上の再生回数をカウントし、
日本の名盤リストを組むなら外せなくなってしまったほどの再評価が起きたのが象徴的でしょう。
そんなニューエイジ/アンビエントは、
聴く手段としてカセットも積極的に選ばれている数少ないジャンルの一つでもあります。
レコードだと流し聴きするという感じではないけど、
カセットならぼんやりかけておくのに合っている
という感覚的な方向性もあるかも知れません。
また、カセットでのみリリースされる作品が少なくない、
という点も見逃せないでしょう。
先述のDIY精神の音楽の延長になりますが、
パソコン一台あればDTMで音楽制作ができる現在、
ニューエイジ/アンビエントの作家も多く活動しており、
フィジカルで出す場合は制作コストのそこまで大きくないカセットで、
というのは理にかなっています。
ヴェイパーウェイヴ
2010年代にポスト・インターネット時代の音楽として
アンダーグラウンドで勃興したヴェイパーウェイヴ(vaporwave)は
カセットの音楽という印象の強いジャンルです。
<ネット上に上がっている音源を再生速度を落としてサンプリングする>
というのがこの音楽を作る手法。
そのサンプリングの元ネタとしてが選ばれる傾向にあるのが、
80年代のメガヒット曲や、ショッピングモールで流れていそうなフュージョンで……
紛れもなくカセット黄金期の世界が再構築されているのでした。
結果的に(というより必然的に)カセットで聴くのにマッチしたサウンドになるわけですが、
この形態でリリースされる理由はそれ以前にもっと単純で、
何度も触れているようにカセットなら製造コストが低いからです。
資本が介入し、音楽制作に多人数がかかわることもないヴェイパーウェイヴは
ひっそりとオンラインで販売される個人製作の代物。
ゆえに、あくまで極々一部のリスナー、
それもコミュニティと言ってもいいかも知れない、
小さな規模の間でのみカセットが売買され楽しまれていた。
……はずだったのですが、
何が起こるかわからないのがインターネットです。
想定以上に世界の多くの人々の心を捉えたようで、
少なくとも10年代後半の時点において
ヴェイパーウェイヴ的意匠を少なからず目にするようになっていました。
(アートワークのヴィジュアルが印象的なのも特徴だったのですが、
そちらの方が音楽性よりも広く伝播していった印象です。)
ヴェイパーウェイヴという概念を知る・触れる人の総数が増え、
ただでさえ少ない本数のカセットを争奪するという、
コレクター数が上回る状況がしばしば起こります。
それゆえ、カルト的人気を誇る作品はプレミアが付き非常に高騰する傾向があります。
このジャンルの代名詞とも言える作品である
MACINTOSH PLUS「Floral Shoppe」のオリジナル・カセットに至っては、
10万円以上の価格で取引されたり、精巧なブートレグが多数出回ったりするほどなのです。

























