【買取コラム】 現代音楽 レコードの買取ポイントを解説！

現代音楽のレコードについて

クラシック音楽入門書や歴史をなぞる文献を読んでいれば、大抵は終盤に現れる現代音楽。
そこに出てくるキーワードといったら、無調性、セリー、ミュージックコンクレート、電子変調、…etc。

クラシック好きの人でもそこまで行くと無理という人もいます。
楽理における規範をいかなるアプローチで問うのか。制約との闘争という面もあり、鑑賞するには難解と感じる場面が多いのも郁子なるかなというところ。

その一方で、クラブ・ミュージックに親しんでいる人のような、非クラシック音楽の鑑賞者からすると音響的な視点で面白く聴ける、ということも往々にしてあって。
ムジカ・ハルモニア以降ヨーロッパで培われていった音楽の歴史、その流れの先端部分たる実験場は刺激と興奮の震源地でもあるのでした。

とは言え、現代音楽のレコードを当時から購入していたという方は、近現代以前のクラシック音楽好事家と比較すれば少数でしょうし、発表されている音源も一般的なポップ／ロックのレコードと比べても販売枚数の規模は大きくないはず。
その限られた特殊な中古市場において、有名作品の相場はそれくらいなのか？高額盤にはどんなものがあるのか？実例を挙げつつコンパクトにまとめてみました。

どんな現代音楽のレコードが高くなるのか？

様々なタイプの現代音楽を取り扱っておりますが、
ミニマルミュージックや電子音楽、フルクサス周辺、
ECM NEW SERIES などは特に人気が高いように感じられます。

生産数も購入者も多いジャンルではないのですが探されてる方もしっかりといますので、
ＣＤ同様レコードも全体的にお値段が付く印象です。

ノイズ/アヴァンギャルド同様、マニアックなジャンルであっても
細かい部分に至るまで丁寧に全ジャンル平等に査定しておりますので、お気軽にお売りください。

さらに詳しい「現代音楽」の買取相場はこちら。実際に買取った金額も提示しております。

現代音楽 レコードの買取金額リスト

それぞれのニーズに合うようにバランスを考えて３つのテーマで紹介します。
もちろんこちらはあくまでも一部ですし
１点１点気になるタイトルがございましたら事前見積もりも可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

・当店での現時点の買取金額になります。
・国内盤の場合は 帯とライナー付、付属品がある場合は付属品付、かつ盤質とジャケットの状態は美品を基準にした金額になります。
・帯なしの場合は大きく値段が下がる商品もございます。また同じタイトルでも帯のデザインや規格品番によっても価格が変わりますのでご注意ください。

持っているかも？「王道・名盤の買取金額タイトル」

一家に一枚！というべき、みんなが大好きでみんなが持っているであろう王道の名盤たちです。
こちらのタイトルでしたら実は持っている方もいるんじゃないでしょうか。

V.A. （ジョン・ケージ、他）/ テープ音楽集 

国内盤 / 規格番号 (H4404V) 帯付 
1,000円買取
ケージ、ベリオ、ドラックマンという三人の作曲家によるテープ操作による電子音楽集。
黎明期ならではのみずみずしい実験の記録といった感触で、例えばケージの「Fontana Mix」はテープ・コラージュによるものですが、演奏は図形楽譜の指示に従っており。
支離滅裂な印象を受けてもおかしくなさそうなところなのに、時にユーモラス、プリミティブで妙に心地よい響き。
対してベリオの「Visage」は彼の妻のヴォイスが蠢くサウンドと交信しているようで、何とも言えず不安を煽られるといいますか。
同じテーマでも三者三様の作曲家の個性が出ています。

フィリップ・グラス / グラス・ワークス 

国内盤 / 規格番号 (25AP2311) 帯付 
1,000円買取
10年代以降の映画音楽ではミニマル・ミュージックが一つの典型となっている印象があるのですが、その源流はフィリップ・グラス（とマイケル・ナイマン）なんじゃないかな、と考えています。
メランコリックに反復する旋律。その一方でロック的な高揚感も得意とするのも彼（実際、ニューウェーヴバンドPolyrockをプロデュース＆キーボード参加していた）。
80年代ならではのポップアート的魅力に溢れた、（語弊を恐れずに言えば）おしゃれな現代音楽。
フレーズの記名性の高さから”これはグラスだな”とすぐにわかるのも凄いです。
映画「コヤニスカッツィ」を観たこともあって、この頃のグラスを聴くと摩天楼や工場の生産ラインといった資本主義で加速する光景が脳裏に浮かぶ……。

カールハインツ・シュトックハウゼン  / 少年の歌 – 接触

国内盤 / 規格番号(SLGM1186) 帯付、ペラジャケット 
1,000円買取
ドイツの現代音楽の巨人であり、ビートルズへ影響を与えたのみならず、彼の教え子の中にイルミン・シュミットとホルガー・シューカイがいたこともあって、ある意味テクノやポストロックへつながるツリーの源流ともみなされるシュトックハウゼン。
「少年の歌」は旧約聖書のテキストの歌唱を素材として、フォネティクスな視座も含めつつパラメーターの調整によって音響的アプローチを試みた作品。
もう一方の「接触」（原題は「Kontakte」）は一寸先の見えぬエレクトロ・アコースティックの衝突。
各サウンドを分別＋カテゴライズし、速度と方向を指示、重ねられる”衝突”がある空間を顕現させているような……。
両代表曲とも未だ刺激的な響きをもたらします。

ヤニス・クセナキス / ペルセポリス

国内盤 / 規格番号 (SFX-8683) 帯付 
3,000円買取
クセナキスと言えば群論や確率論などを援用した数学的作曲法と、そこから導かれる独自の音の構造物、というイメージがあります（かのコルビュジエのスタジオに在籍していましたしね）。
イランのペルセポリス遺跡という場において、それも”ポリトープ”と彼が呼ぶ＜音＞＜光＞＜空間＞の総合的演出の下で演奏されたことは念頭に置くべきでしょうが、一端であるこの録音だけでも恐ろしくスリリングです。
メタリックな耳ざわりの民族楽器のアタック、軋むコンクレート音。この世のものとも思えぬ極限的音響に意識が遠のいていく。

アルヴォ・ペルト / タブラ・ラサ

国内盤 / 規格番号 (25MJ3450) 解説書、帯付
2,000円買取
ミニマル・ミュージックの世界においても、静謐さと祈りの敬虔なる熱情とを感じさせる作風のペルト。
旋律の美しさ、エストニアの出自から抱かれるのだろう神秘的なイメージ。
ECMからの発表ということもあって、クラシックにとどまらない多くの音楽好きから支持されるのも頷けるところ。
中学生のときに友人の父親から今作のCDを受け取ったのですが、１曲目の「Fratres」を聴いた瞬間、こんなにも哀しくて綺麗な音楽があるのかと目を瞑ったのを思い出します（そしてドラマチックな「Cantus In Memory Of Benjamin Britten」で放心した）。
独自の宗教的な音楽世界が、聴く人の心の鏡に映り込み内面化していくよう。

これがお宝！「トップクラスの高額買取タイトル！」

実はこれが高かった！的な、みなさまが知りたいお宝タイトルです。
もしお持ちでしたら是非当店をご検討ください！

La Monte Young / The Well-Tuned Piano 81 X 25 6:17:50 – 11:18:59 PM NYC

アメリカ盤 / 規格番号 (18-8701-1) 5枚組、BOX SET
45,000円買取
これは”永遠”の試み。ウェル・チューンド・ピアノ、つまり良く調律されたピアノ（ベーゼンドルファー製）。
純正律に精密な設定がなされ、自然倍音が悠久の時間をとめどなく流れ、紫色の照明空間を満たす。
ミニマル・ミュージックの巨人の一人であるラ・モンテ・ヤングですが、ここで聴かれる旋律はクラシックというより汎東洋的と形容すべきもの。
いくつか演奏の記録が存在しますが、こちらは1987年にGramavisionから発表されたLP5枚組（収録時間5時間以上！）。
歴史的にも大きな意味合いをもつので資料性の需要もあるのでしょうし、内容の素晴らしさからも多くの音楽好きも手元に置いておきたいはず。納得の高額盤です。

島田璃里 / 迷宮のエリック・サティ

国内盤 / 規格番号 (LM1268) インサート付 ※元々帯なし
50,000円買取
Locus Solusなるインディペンデント・レーベル（３作しか出ていない）からの一枚でコジマ録音作品。
エリック・サティ研究の第一人者でピアニストの島田璃里による「ジムノペディ」「グノシエンヌ」の演奏がB面、フリージャズ方面のサックス奏者である高木元輝との共演がA面に収録されています。
いわば日本の地下音楽の記録であり、まず出会えないはずの幻の一枚。
肝のA面ですが、島田の落ち着いて気品ある不動のピアノに対して、高木のフリーキーに突発する前衛的金管が面白いコントラストを形成。それが妙に頽廃的なサロン性を醸し出していて、得も言われぬ鮮やかさを感じます。
なるほど、確かにこれは……カルト盤ですね。

 鈴木昭男 / 時間の穴 ANALAPOS

国内盤 / 規格番号 (AL-3010)   帯付    ※元々ライナーなし
50,000円買取
現代音楽においては美術の分野との領域横断の部分もありました。
クラシックの系譜からは逸脱して見えますが、ケージとフルクサスの関係は少なからず知られていますし、サウンドアーティストで演奏家（パフォーマー）の鈴木昭男もALMから出ているので範疇の内側と言えるはず。
1980年に200枚限定で制作された稀少盤でありカルト盤。
A面は”3台のポータブル蓄音機と,声・音具（音のオブジェ）の音・オランダフェスティバルでの録音からなるドーナツ盤・各２～３枚を”皿まわし””（本人のサイトより引用）。
B面は自作オリジナルのエコー楽器＝アナラポスのパフォーマンス。”長いコルクスプリングとその両端につないだドラムからなる創作楽器による即興演奏”（本人のサイトより引用）。
好奇心くすぐる奇妙な音響。至ってシンプルな印象なのに、よくよく考えてみると他で聴いたことがない。
時間の穴とのタイトルに相違なき特異点であり、謎そのもの。凄すぎる。
ちなみにこのパフォーマンス、名古屋で披露されたものとのこと。

 当店スタッフがセレクトした「おすすめ買取タイトル！」

当店スタッフが好きな作品で売ってくれたら嬉しいな、と思っている おすすめタイトルをピックアップ。
持っていたら是非当店へ売ってください！

スティーヴ・ライヒ / 18人の音楽家のための音楽 

国内盤 / 規格番号 (PAC-2055) 帯付 
4,000円買取
高校のときにNHKのライヒ特集を観て、完全に虜になりました。どれくらい虜になったかというと、周りの友人に布教するくらいには。
エネルギーを感じさせる初期、ポップに世界へ受け入れられていった80年代後半以降。
どの時代も魅力的な作品がありますが、1978年にECMから発表された代表作「18人の音楽家のための音楽」はアンサンブルの妙、これぞライヒというフレーズ／フェイズの揃っていて、いつ聴いても快楽を呼び起こすマスターピースだと感じます。

Robert Ashley / Automatic Writing

アメリカ盤 / 規格番号 (VR1002)
3,500円買取
クラシックというより実験音楽やクラブ・ミュージックのリスナーに認知されている節のあるカルト作。
トゥレット症候群に着想を得たという、曖昧に発声され消え入るヴォイス。
それが幽けき電子音とコンクレート音に均質的にミックスされ、極めてうっすらと部屋の空気に溶けこんでいる。淡く、甘く……口の中で転がすキャンディが歯に当たってはまた転がるような。
真空における対生成／対消滅も連想させる揺らぎの音響に陶酔。

Morton Feldman / Rothko Chapel – For Frank O’Hara

アメリカ盤 / 規格番号 (Y34138) 
7,000円買取
フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、ピアノ、パーカッション、そしてコーラス。
従来のクラシックの編成に則りながらも、フェルドマンのコンポジションは俗世を離れ、幻想世界への想像も離れ、ロスコ・チャペルという場＝空間の内包する聖性を喚起します。
静謐と不協和は透明さを湛え、宗教における物語性やドグマを絶縁しつつも、アンサンブルは粛然として立ち上る。祈りそのものが音の形式を以て現前したよう。心洗われる美しさ。

佐藤聰明 / 太陽讃歌

国内盤 / 規格番号 (AL-11)
6,000円買取
ミニマル・ミュージックへの日本から回答の一つ。
２台のピアノが紡ぐトレモロを、電気的に増幅しディレイをかける。
さすれば聳え立つ、曼荼羅の如き黄金の倍音の壁。打楽器として叩かれる鍵盤、漲る緊張感。
残響に三半規管は眩み、サイケデリックとも言える境地へ鑑賞者を連れていきます。
汎アジア的な印象を受けるトランス・ミュージックであり、爆音ポストロックすら圧倒する1976年作品がここに。

ギャヴァン・ブライアーズ / タイタニック号の沈没

国内盤 / 規格番号 (25MM0155) 帯付 
3,500円買取
ブライアン・イーノのObscure Recordsから記念すべき第一作目として発表された、非クラシック音楽のリスナーからも人気の高い名作です。
タイトルの通り、豪華客船タイタニック号の悲劇に構想を得た、哀しくも美しい、そして魂の安らぎをもたらすような……雄大で荘厳な弦楽の持続的響き。
崩壊する運命を悟り、今この瞬間よ永遠たれと安寧を求める望みが音楽として描かれたのなら。
それは奇しくも9.11の後に生まれたアンビエント～ドローンの傑作の数々を予見していたようにも思えるのです。

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